ウミネコの調査記録
黒田隆司とウミネコとの関係は、昭和33年4月29日にウミネコの繁殖地弁天島(蜑取島)に無許可で上陸し、地元の駐在所に呼ばれたことから始まった。それから亡くなる直前の平成10年まで弁天島・白崎・大碆・立巌・鹿尾菜島のウミネコ繁殖地の調査や保護対策に奮走している。出版されている『川の中の杭』の中では、ウミネコの生態・個体数の経年変化が報告されているのみで、保護活動に関連した資料はなく、ここではこれらを含め,年ごとに記載された記録等の資料をまとめてみた。
まずは繁殖地の位置関係を知っていただくため、周辺地図・風景を見ていただこう。


大碆のウミネコの親とヒナ

大碆で群れるウミネコ

立巌の岩場

弁天島のウミネコ
ウミネコの調査記録
昭和33年4月1日
美浜町の弁天島(蜑取島)が、近畿沿岸唯一のウミネコ及びウミネコ繁殖地として県の天然記念物として指定される。
昭和33年4月29日
黒田は、この日漁師にお願いして弁天島に上陸したが、ウミネコの繁殖地として県の天然記念物に指定されているので、地元の警察官に駐在所に呼ばれる。
昭和34年
ウミネコの調査 伊勢湾台風により弁天島土砂大量流失。上陸調査。
昭和46年2月下旬
ウミネコの調査 玉井政友が衣奈~弁天島調査衣奈~小引50羽・阿尾5羽・三尾100羽
昭和46年3月上旬
ウミネコの調査 玉井政友が日高川河口~切目調査鰹島付近10羽・日高川河口40羽・切目付近20~30羽
昭和47年6月6日
ウミネコの調査 古田武光・吉田謙・黒田他生物部鳥類班
午後4時30分~5時30分
弁天島に着島している成鳥は116羽、ヒナの数は13羽、死骸3羽、卵5が確認された(地図参照)。33年に上陸した時は上陸地点付近から粗雑な藁が見られたが、今度上陸してみておどろいた事は営巣しているのだろうかという心配であった。調査してみると、人の立ち寄りにくい場所や岩隙や岩隙植物の間に上記のような巣やヒナを確認できたが、この激減に対して生態調査とともに早急に保護対策を講ずる必要を感じた。図1蜑取島(弁天島)のひな及び巣分布巣略図

生態調査
- ヒナに脚帯をつけて移動を観察する
- 白崎の立巌への移動状況を調べる。
- 弁天島対岸にすむトビ数羽がウミネコをおそうのを5月に観察でき、トビの生態を調べる。
保護対策
- 人の立入に対する対策
- トビに対する対策
- その他
昭和47年6月11日
ウミネコの調査 立巌150羽・白崎100羽
昭和47年6月14日
ウミネコの調査 立巌50羽(ヒナ1羽確認、10羽余りの声を聞く)・白崎200羽
昭和47年6月15日
ウミネコのヒナ 由良町衣奈柏木芳夫氏、ウミネコのヒナを昭和47年5月29日夕方三尾川の峠でひろい、飼育中との連絡あり。柏木氏より同定のためヒナ持参。ウミネコと同定。生後約4週間位と推定される。番号5002をつける。(NHK撮影6月24日7時20分放映) 下記リンク「ウミネコの生態」参照。
測定値
翼長20センチメートル・尾長2センチメートル・嘴峰3.6センチメートル・蹠長6センチメートル・体重360キログラム・羽毛の色黒褐色
昭和47年6月11日
ウミネコの調査 立巌150羽・白崎100羽
昭和47年6月25日
ウミネコのヒナ イワシの生が好物。まだとべず、放鳥できず。
昭和47年7月3日
ウミネコのヒナ 2日前に柏木氏飼育中のウミネコ小学校付近までとんだので放鳥できるのではと連絡あり。
昭和47年7月4日
ウミネコのヒナ 県の児野、柏木芳夫氏宅訪問。体重420グラム。後半月位でないと放鳥できない。放鳥場所は黒島付近(30羽)当日確認。現在サバの内臓を食べている。
昭和47年7月10日
ウミネコの調査 梅雨で晴れたり曇ったり風やや強く小波あり。日高川河口~煙樹ヶ浜~弁天島~阿尾~比井~田杭~由良~白崎~衣奈調査弁天島(幼鳥を含めて)43羽立巌(幼鳥を含めて)約50羽白崎約250羽その他日高川河口~衣奈までの海岸線には一羽も確認されず。
ウミネコのヒナ 柏木氏飼育の幼鳥は、犬の飼育ケージに入れられ、水浴びできるようにタライも入れられ快適な状態。餌はイワシ・内臓をよくたべ、水浴びもよくする。
測定値
翼長30センチメートル・尾長センチメートル・嘴峰4.3センチメートル・蹠長5.5センチメートル
昭和47年7月22日
ウミネコの調査 弁天島53羽・白崎0羽
昭和47年8月4日
ウミネコの調査 衣奈~日高川河口調査弁天島0羽・白崎0羽
ウミネコのヒナ 子供になつき、暑いせいか口をあけていた。脚帯は自分でつつき落とし、5003を付け直す。
測定値
翼長30センチメートル・嘴峰4.5センチメートル・脚5.2センチメートル・尾長14センチメートル・体重400グラム
昭和47年8月16日
ウミネコのヒナ 9時30分放鳥、夕方浜に。
昭和47年8月19日
ウミネコのヒナ 朝、柏木氏宅を出て行って、また夕方衣奈浜へ。
昭和48年6月16日
ウミネコの調査 黒田・杉浦・山本
弁天島調査。成鳥80羽(34羽)ひな8羽(13羽)・死骸4羽(3羽)・卵なし(5個)。()は昭和47年調査分
昭和49年3月
ウミネコ保護 弁天島の上陸・立入を禁止。繁殖期に上陸しないよう上陸禁止の線引きを行う。地元美浜町教育委員会・漁業協同組合。
昭和49年7月2日
ウミネコ保護 要望書を由良町長に提出
下記リンク「資料1 ウミネコ保護要望書の内容」参照。
昭和52年5月26日
ウミネコの調査『弁天島のウミネコ調査報告』黒田隆司(下図2参照)
島根県日の御崎の経島(ふみしま)でウミネコのヒナが117羽死体となって散乱、ふ化しない卵約1000個そのうち約200個が腐っている。そしてその原因は5月初旬の低温や冷雨、天候不順の異常気象によるもの(昭和52年5月24日付朝日新聞)とのことで美浜町三尾弁天島の繁殖状態が心配され、5月26日午前10時から少雨の中、県教育委員会 美浜町教育委員会 村尾敏一氏等の協力を得て 昭和48年6月16日の調査以来ウミネコ繁殖率低下のため中止していたものを4年振りに繁殖状況を調査した。
4月ウミネコの弁天島への着島する数は、昭和33年500羽以上 昭和44年400羽 昭和46年123羽 昭和47年116羽 昭和48年99羽と減少しつづけ ふ化したヒナの数も昭和47年13羽 昭和48年8羽と激減し 美浜町に弁天島のピンチを訴え 昭和49年3月美浜町は弁天島への上陸禁止の立札や立入り禁止の線引きを実施した。その結果、ウミネコの着島数も昭和49年121羽 昭和50年186羽 昭和51年150羽と次第に増加してきた。
今回の調査では、着島数は230羽に回復 ヒナの数もふ化したヒナの数も40羽 ヒナの死体は1 ふ化していない卵は2個で昭和48年の調査時は人によって ふみ荒らされ ゴミがたくさんあった屋根から頂上にかけての道には 5個の巣と6羽のヒナが確認され 全体で昭和48年の5倍以上のふ化数に達し ふ化率も非常によかった。
ウミネコは地方によっては弁天さまのお使い、漁のありかを知らせる鳥とし漁師から大切にされ 美浜町の保護が見事みのったものと高く評価したい。なお 今後 悪条件さえなければ 着島数およびふ化数は増加すると思われる。

昭和52年8月4日
ウミネコ保護白崎鳥獣保護区設定の公聴会に出席。
下記リンク「資料2 広聴会関係」参照。
平成元年6月4日
ウミネコの調査 対岸より観察。弁天島のウミネコは今年は順調に営巣、抱卵し、目下ヒナ孵化して、10日余りのヒナが親鳥の傍らでよちよち動いている。成鳥の着頭数は93羽、採餌に出ている成鳥を入れると200羽から300羽の飛来で、昨年度と変わりないと思われる。
平成3年2月
南部町在住の田宮澄子さんから黒田先生に手紙。南部海岸で見つけた標識をもつウミネコの調査を頼まれる。
下記リンク「標識を着けたウミネコ」参照。
平成4年4月
『ウミネコ由良町鹿尾菜島で集団営巣』黒田隆司
1992年4月20日蜑取島50羽4月28日蜑取島46羽立巌104羽白崎97羽今年の着島は遅いのだろうか昨年4月22日蜑取島280羽4月25日立巌150羽白崎250羽だったのに。1993年頃からウミネコの着島数など調べている私にとって蜑取島の毎年200~300羽着島状態からの急変は気がかりでならなかった。たまたま5月10日の探鳥会でこの話をすると玉置洋子会員から蟻島付近の島にウミネコがいると知らされた。早速当日、沼野正博会員と調査をした。蜑取島44羽やはり少ない。そこで海岸を北上してムロノキの鼻から、蟻島と畑島の間に見える鹿尾菜島を見ると南面に約400羽着いていた。島の下の方の岩上に釣り人が見られた。さらに由良湾海岸を一周して立巌と白崎を調べた。ここでは例年400羽以上着島するところであるが、立巌60羽白崎20羽合計80羽であった。ところが、白崎より南約1.2キロメートルにある鹿尾菜島の北面にも約400羽鹿尾菜島の合計は800羽以上になる。それは弁天島(蜑取島)に着島するはずの300羽のうち250羽が、立巌・白崎に着島するはずの400羽のうち300羽以上が鹿尾菜島に移動したものと考えられる。移動の原因は今後の状況を見て判断しなければ分からないと思うが、蜑取島などでは砂礫の流失など営巣地の環境悪化も考えられる。
蜑取島・立巌・白崎・鹿尾菜島のウミネコの着島数
蜑取島・立巌・白崎・鹿尾菜島のウミネコの着島数(PDF:125.6KB) (PDFファイル: 125.6KB)
平成7年6月12日
『ウミネコ異変』黒田隆司
ウミネコ由良町大引の大碆(道路から20メートル余りの島)で約300羽集団繁殖。
カモメ科のウミネコは1992年から1994年にかけて3年間ひじき島で約900羽集って繁殖していたが、今年は4月下旬大引の防波堤に約800羽交尾(4月21日22日調査)。その後、白崎に約400羽立巌約200羽そして道から30メートルも離れていない大碆で約300羽集団繁殖していることが分かった。6月10日の調査ではヒナの数29羽推定約100羽ウミネコは4月下旬から岩の上に小枝や枯れ草を集め巣をつくり2個の卵を産み、24~25日抱卵してヒナが孵化し、孵化したヒナは1週間程一日中親に抱かれて巣の中にいる。約40日経った6月~7月にかけて巣立ちする。こんな真近かでウミネコの子育てを見られるのは日本でも数なく珍しい。
ウミネコ保護 大碆上陸禁止。由良町教育委員会
平成9年4月22日
ウミネコの調査 昨年度と変わりなし。目下交尾を終わりに近づき、産卵に入っているのもあり。
- 弁天島:120±
- 立巌:150±
- 白崎海洋公園:250±
- 外の岩壁:120±
- 大碆:120±
- 大引港防波堤:150±
平成10年6月5日
ウミネコの調査 弁天島をWTVと合同で調査
御坊市 教育委員会 教育課
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更新日:2023年06月15日