コウノトリの行動記録(1976年)

更新日:2023年06月15日

黒田隆司退官記念論集 「川の中の杭」引用 昭和 年 月 日発行

日高高校生物部「HARUMAS Vol19」詳細記録参考 昭和52年3月発行

日高郡美浜町入山におけるコウノトリの行動記録(日高高校生物部)

コウノトリの写真画像

はしがき コウノトリ写真

 コウノトリ  Ciconia boyciana の和歌山県への飛来は、昭和43年11月6日に日置川町大古それに昭和47年11月19日に、古座町でそれぞれ1羽が短期間漂行してきて以来のことである。

 昭和51年11月3日に、日高郡美浜町和田の入山付近の人が見かけ11月8日にコウノトリであることを確認した。それ以来12月23日まで約50日間入山の北側の小高い丘の松喰い虫で枯れた松の枝を主にねぐらとして、美浜町、日高町そして御坊市の水田の用水路や川で採餌をして生活をした。この鳥は、ユーラシアに分布し日本にもかっては、広く分布していたが、戦時から戦後にかけて巣となる高木の乱伐や農薬などの影響で、その数は急に減少しついに昭和43年には、野生のものはなくなり、わずか毎年五羽前後大陸から冬鳥として迷いこんでくるだけになってしまった。古来この鳥は、習性から夫婦の信頼、親子の愛情の象徴とされたり、近代では、幸せを運んで来るとか、赤ん坊を連れて来る鳥とかいわれている。付近の田は、幸せを運んで来る鳥として見守り、県外からも、この鳥の優雅な舞を一目見ようと足をはこんでくる人もいた。

行動記録

 私たちは、この滅びゆく孤独な鳥の行動を見守り、その生態を観察し行動を記録していった。

11月8日(月曜日)晴れ

この日の朝、この鳥の情報をうけ昼休みに入山へ確認しに行った。

13時00分にこの鳥を発見しコウノトリであることを確認した。

13時00分に入山の椎崎上空より滑翔しながらその優雅な姿を現した。そして、3回旋回した後北の方へと飛んで行ってしまった。15時00分に煙樹ヶ浜上空を飛んでいるのを見つけた。コウノトリは、国道42号線と入山との間の上空を北の方へ飛んで行き、入山の椎崎上空で大小多数の楕円を描きながら旋回し、15時40分に椎崎の山陰へ姿をけしてしまった。17時00分にコウノトリがとまっている枯れた松の木を見つけた。この時はゴイサギも同じ木にとまっていた。19時00分にも同じ木にいることを確認した。

11月9日(火曜日)くもり

この日から朝早く生態観察を始めた。

コウノトリは6時28分に椎崎の上空に現れたがすぐ山陰に姿を消した。

7時25分に北裏の水田にいたが飛び立ち、入山の北側を回って小池と立花との間を流れる和田川へおりて採餌を始めた。

7時41分に南の方へ飛び立ち和田の集落の近くの用水路におりたが、餌がないのかすぐ飛び立ち立花の近くの水田へおり、ゆっくりと歩いて用水路へはいった。餌をとるときには、回りをとても警戒しながら5~10秒おきに、くちばしを水中へつっこんで餌を探し、餌物は横向けにくわえて一呼吸して、一気にのみこむというような採餌のしかたであった。人や動物が近くを通りかかると、首を真っすぐに伸ばしとても警戒していた。

7時57分には、トビにおいはらわれるようにして飛び立ち、再び和田川におりた。

8時13分に小川の中を50メートルくらい歩いたらしく、おりた所よりも上流から飛び北の方へ旋回しながら飛んで行き、8時15分に谷口の近くにおりた。しかし近くに農作業をしている人がいたので、すぐに飛び立ち8時18分には入山の山陰に姿を消してしまった。

昼からは、14時55分から調査を始めたが水田で見つからなかったので、15時30分にねぐらの見える西川の堤防へ行った。すると、もうすでにねぐらにとまって、羽づくろいをしていた。

16時30分までコウノトリのねぐらでの動きを観察したが、じっとしていて別に変わったことはなかった。

ねぐらでの休息のしかたは、くちばしを喉羽の中にいれ片足で立ってじっとしていた。

11月10日(水曜日)くもり

6時00分にはもうコウノトリは、ねぐらにはいなかった。しかし6時05分に再びねぐらにもどってきた。

空全体が明るくなって来た6時26分には南の方へ飛んで行って見えなくなってしまった。

6時40分には、立花の山陰から姿を現し、旋回しながら立花の近くの水田へおりそれから用水路にはいり採餌を始めた。約15分間採餌をした後、西の方へ飛び和田川へ降りたが、7時08分には再び立花の水田へもどって来た。そしてまた7時16分に和田川へ飛んで行き、7時21分に再び飛び立ち南へ100メートルほど飛んでまたおりた。

7時25分にはまた飛び四回旋回して立花の近くの水田へおりた。

7時29分に飛び立ち大きく旋回しながら北西の方向へ飛んで行き谷口の南約200メートルくらいの水田へおり、北東の方へ100メートルくらい歩いて行き、8時05分に再び飛び立ち大きく旋回しながら南下し、途中で進路をかえて北上し椎崎と小池の間の水田へおりた。

昼から、14時30分にはすでにねぐらにいたが、14時45分に飛び立ち入山の西側を小さく3階ほど旋回して14時50分にまたねぐらへもどった。ねぐらにもどると、すぐに羽づくりを始めた。

1951年11月10日の行動略図
コウノトリの飛行写真画像

11月11日(木曜日)くもりのち雨

6時15分にはもうねぐらにいなかった。

6時40分にねぐらの北500メートルくらいの水田にいるのを見つけたが、6時45分に南の方へ飛び立ち入山の北裏の山陰へ姿を消した。

8時15分まであちこちさがしたが見つからなかった。15時26分入山と西山の北の方へ飛んでいくのを見つけたが1分後には椎崎のねぐらに帰った。

11月12日(金曜日)晴れ(風強し)

6時36分小池と和田のちょうど中間ぐらいの所で7時30分まで採餌をしていた。

この日は、とても風が強かったのでコウノトリもあまり飛ぼうとしなかったが、人が近くを通ったため7時40分に北の方へ100メートルほど低く飛んで行った。風が強いので、飛ぶのにはとても苦労していた。

7時45分に、こんどは西へ200メートルくらい飛んだ。そして北へゆっくり歩いて行き、8時00分に北の方へ飛び8時01分に小池の近くへおりてじっとしていた。

この日は車の中でじっと観察していたので、コウノトリのほうから20メートル近くまで近よってきた。その時の特徴は

  1. 目のまわりに羽毛がない。
  2. くちばしは横から見ると太く見えるが真正面から見ると細い。
  3. くちばしの先端がうす赤い。
  4. くちばしのつけねの下が赤い。
  5. 足は赤というよりも肉色であり頭かきは直接頭かきであると言うことがわかった。

14時10分小池の南約100メートルくらいの水田でじっとしているのを見つけた。

14時30分に、用水路にはいり15時30分まで採餌をしていた。

15時30分に採餌をやめ15時50分まで水田の中でじっとしていたが、15時50分に人が近づいて来たため飛び立ち16時05分にねぐらにもどった。風が強くてねぐらまで行くのにたいへん苦労していた。

16時35分には、風が強くてねぐらにとまっていられなくなったのか南の方へ飛んで行った。

17時01分には、再びねぐらにもどって来たが、いつもとまる木の下の枝にとまったので姿は見えなくなった。これは強い風をさけるために下の枝にとまったのだと思う。

11月13日(土曜日)くもり

6時25分にねぐらから飛び立ち、6月27分に立花の西約50メートルの水田におりてじっとしていたが、6時29分にトビにおわれるようにして飛び立ち、6時30分に小池の南約100メートルくらいの所にある用水路にはいり採餌を始めた。

7時49分・7時52分・7時58分と100メートルくらいずつ飛んで北の方へ移動していった。

11時50分立花と小池の間を流れる和田川のそばにいるのを見つけ数分後にこの小川にはいった。

12時00分に一度外に出たがまたすぐに川へはいった。

13時30分西山と西裏の間の水田でじっとしているのを見つけた。

13時55分に南の方へ飛び立ち入山をこえて東の方へ飛んでいった。

その後15時30分まで見つからなかったが、15時30分にねぐらへもどって来た。

11月14日(日曜日)雨

この日は雨が強くて双眼鏡がつかえなくなったので、コウノトリがいることだけを確認しておいた。

11月15日(月曜日)晴れ

6時30分小池の南側約300メートルほどの水田から北に向かって歩いているのを見つけた。6時37分に飛び立ち小池と椎崎の間の葦原へ降り、7時30分までこのあし原にいた、7時30分までこのあし原で採餌をしていたが、7時30分には北にのびる用水路へはいり北のほうへと採餌をしながら歩いて行った。

8時07分にもまだ北へ採餌しながら移動して行った。

15時50分に小池の南400から500メートルくらいの所にある用水路で、コサギといっしょに採餌をしているのを見つけた。コサギは、飛んだりはねたりしていたが、コウノトリは、コサギの中で1羽だけゆうゆうと採餌していた。そして、16時59分に北の方へと飛んで行きねぐらに帰った。今日までの行動をふりかえってみると、初めのうちは採餌場所もばらばらで短時間であったが、この日ごろからは、一定の場所で長い間採餌するようになって来た。

11月16日(火曜日)晴れのちくもり

6時20分に小池の南400から500メートルくらいの所にいるのを見つけた。頭かきをしていた。そして、用水路にはいり7時00分まで採餌をしたが、7時00分に一度飛び立ったがまた同じ所におりて採餌をはじめた。8時までずっとこの付近の用水路で採餌をしていた。

15時25分から16時00分まで谷口と小池の間の水田で、首をちぢめ、くちばしを喉羽につけじっとしていたが16時00分にねぐらへ飛んで行った。

11月17日(水曜日)くもりのち雨

6時30分に小池の南400から500メートルくらいの所の用水路で採餌をしているのを見つけた。

7時25分に鉄砲の音に驚いて用水路から飛び出した。そして7時26分に小池の東100メートルくらいの所へおりて、北の方へずっと歩いていった。そして、7時45分に谷口の南側の所でじっとしていた。

15時08分には、すでにねぐらにとまっていた。

16時00分にはゴイサギが飛んできて同じ木にとまった。

11月18日(木曜日)雨のち晴れ

6時30分から7時20分まで小池の東約100メートルくらいの所でじっとしていた。雨がふっていたので詳しいことはわからなかった。

11月19日(金曜日)晴れ

5時55分には、ねぐらで南の方を向いてじっととまっていたが、6時05分にはねぐらで少しずつ動き始めた。

6時10分には動きが活発になり、羽をひろげたり羽づくろいをしたりするようになり、6時15分には東の方へ飛んで行き山の陰で姿を見うしなった。

6時50分までの行動は、わからなかったが6時50分に小池と立花との間の用水路で採餌をしているのを見つけた。

7時02分に近くを車が通りかかったので、西へ少し飛んで和田川へおり採餌をしながら北へと歩いて行った。

7時35分再び車が近づいて来たので飛び立った。この瞬間糞をした。それは、サギやシギなどとはちがって、バラバラでシャワー状の糞であった。そして、入山の北側と西川で何度も旋回した後の7時51分に、椎崎と谷口の間の用水路へおり北の方へと歩いていった。

15時14分に小池上空を飛んでいるのを見つけ、15時15分には小池の南東100メートルくらいの所に降り、くちばしを喉羽の中にいれ、15時34分までじっとしていた。

15時34分には羽づくろいをはじめ、15時41分にねぐらへ飛んで行った。

16時45分まで観察したがいつもと変わりなかった。

1951年11月19日の行動略図

11月20日(土曜日)くもり

6時15分に南の煙樹ヶ浜方向から飛んできて、小池の南400から500メートルくらいの所に降り、用水路へはいって採餌をはじめた。

6時38分に東の方へ飛び立ち、西裏と西山との間を流れる和田川へはいって採餌をはじめた。

6時45分に南へ飛び立ち、和田の近くの用水路へおり8時00分まで採餌をしていたが、8時00分には北の方へ飛んで行った。

13時50分には小池の南東100メートルくらいの所で採餌をしているのを見つけた。

その後、14時00分には、ねぐらへ飛んで行った。

この日は、ねぐらにもどるのが非常に早かった。

11月21日(日曜日)晴れ

8時00分に西裏上空より現われ、旋回して北の方へと飛んで行った。

11月22日(月曜日)晴れ

午前中みんなで捜したが見つからなかった。しかし15時32分には、ねぐらにもどって来ていた。

11月23日(火曜日)くもりのち晴れ

7時45分に西裏上空より現われ、7時50分に小池の南東約100メートルくらいの所の水田へ降り、くちばしを喉羽に入れじっとしていた。

15時00分には、ねぐらにいるのを確認した。

11月24日(水曜日)くもりのち晴れ

6時05分にねぐらにとまってじっとしていたが、6時15分になると喉羽からくちばしを出し動き始めた。そして6時25分には羽づくろいや羽のばしを始め、6時27分は北の方へと飛び立ち、椎崎と高家の間へ降りて羽づくろいを始めたが数分後には、体をふくらませてじっとしてじっとして動かなくなった。

7時00分になるとまた動き出し北の方へと歩いて行って、東西に流れる用水路の中へ、はいり採餌をはじめた。

7時06分に西へ飛び立ち、7時09分に谷口の東側の用水路にコサギ6羽とおりて7時11分に用水路へはいり、採餌をはじめたが、7時25分には採餌をやめ、じっとしていた。

7時44分に人が近づいて来たので東の方へ飛び立った。

7時45分に椎崎と高家の間の水田へおりて、7時50分に用水路へはいり採餌をはじめた。

7時55分には、用水路から出て頭かきをした。

そして、くちばしを喉羽の中へ入れ体をふくらませ、じっとしていた。

15時58分にねぐらにもどってきていた。

11月25日(木曜日)晴れ

6時30分にねぐらから東の方へ飛んで行ってしまい姿を見失った。

8時00分まで捜したが見つからなかった。

昼からは、15時45分にはもうねぐらに、とまっていた。

11月26日(金曜日)晴れ

7時00分にねぐらにとまっていたが、少し目を放したすきにどこかへ飛んで行き、8時00分まで捜したが見つからなかった。

15時25分には、すでにねぐらにとまっていた。

11月27日(土曜日)晴れ

6時30分にはすでにねぐらを飛び立って、いなかった。

その後ずっと捜してついに7時45分に西裏上空を飛んでいるのを見つけた。

何度も大きく旋回しながら7時50分に小池の南東50メートルくらいの水田へ降り、じっとしていた。

コウノトリ番いの写真画像

11月28日(日曜日)晴れ

6時15分に椎崎上空を北の方へ飛んで小中上空で旋回し、入山と西山の間を南の方へ飛んで行って6時25分には見えなくなってしまった。コウノトリ写真

7時15分に椎崎と谷口の間の上空を北の方へ飛んで行く2羽のコウノトリを見つけた。

7時17分に志賀川と西川の間へおり用水路の中へはいり、2羽ならんで採餌をしながら東の方へ歩いて行った

12時30分に2羽いっしょに内原駅上空を飛んでいるのを見つけた。

そして、西の方へ飛んで行き、途中で南に方向をかえ西山と入山の間の空を南の方へ飛んでいった。

13時00分に亀山上空を飛んでいるのを見つけた、後に旋回しながら日高々校上空を飛んで名屋の方へ飛んでいった。

この日は、2羽とも肉眼では見つけられないくらいの上空を飛んでいた。

14時30分に小池と立花の間の上空を飛んでいるのを見つけた。

14時40分に椎崎と高家の間を南北に流れる用水路にはいり2羽いっしょに採餌をはじめた。その後15時05分に飛び立ち2羽いっしょにねぐらにもどった。

ねぐらでは、1羽が木でくちばしふきをしたり、マツボックリをくわえたりして今までの行動では、見られなかったことをした。

11月29日(月曜日)くもり

6時20分1羽だけ飛び立ったが、もう1羽が飛ぼうとしなかったので上空を旋回した後またねぐらにとまった。

7時04分には2羽あいついで飛び立ち上空を2回旋回して南の方へ飛んで行った。そうして7時10分には再びねぐら上空に姿を現わし、前になったり後ろになったりしながら、飛んで来て、2羽谷口の東側のエンドウ畑におり、1羽だけ用水路にはいり採餌をはじめた。7時30分には、2羽があいついで飛び立ちねぐら上空を何度も旋回して東の方へ飛んで行って見えなくなった。15時35分にねぐら上空を飛んでいるのを見つけた。

その後は、南の方へと飛んで行き、15時40分に煙樹ヶ浜の松林上空で姿を見うしなった。15時55分に、煙樹ヶ浜方向から北に向かって飛んで来ているのを見つけた。

16時15分に立花上空を飛んでいるのを見つけた。そして、その後何度も旋回しながら、16時30分に1羽がねぐらにとまり16時35分にもう1羽がとまった。

風が強かったので一段下の枝にとまった。

コウノトリ番いの飛行写真画像

11月30日(火曜日)晴れ

7時30分に立花と小池との間の水田に2羽いるのを見つけた。

2羽は、この付近を、いっしょに歩いたり、飛んだりしていたが、8時05分には東の方へと2羽飛んでいったが、8時10分には、またもどってきて同じ所へ降りた。そして、ねぐら上空を旋回した後、西の方へと飛んで行った。しかし、15時50分には再びねぐら上空に現われ、こんどは東の方へ飛んで行った。16時05分に1羽だけが、ねぐらにもどって来て、いつもとまる枝の一段下へとまった。その後もう1羽がもどって来た。

12月1日(水曜日)晴れ

6時35分に立花と小池との間の用水路で採餌しているのを見つけた。

6時45分に2羽飛び立ち旋回しながら西の方へ飛んで行き、7時00分に小池の東50メートルくらいの所におりた。

その後2羽いっしょに採餌をはじめた。

昼からは、2羽とも確認できなかった。

12月1日午後から、12月6日まで2羽とも確認できなかった。

12月7日の8時30分に椎崎と高家の間の用水路にいた1羽を付近の人が見掛けた。(1羽だけ戻ってきた)

15時00分にも、いままでいたねぐらと同じ木にとまっていた。12月8日、朝入山上空を飛んでいるを見た。12時00分にも入山と西山の間を飛んでいるのを見掛けた。

この日は15時00分にねぐらにもどってきていた。

12月9日(木曜日)雪

この日は、だれもコウノトリの姿を見掛けなかった。

12月10日(金曜日)晴れ

入山付近を飛んでいるのを付近の人が見掛けた。

12月11日(土曜日)晴れ

9時00分に小池の付近で採餌をしているのを付近の人が見掛けた。

12月12日(日曜日)晴れ

6時50分から9時30分まで小中の水田で採餌をしていた。

16時00分にも高家の川で採餌をしていた。

16時45分に飛び立ちねぐらにもどった。

12月13日(月曜日)くもり

14時00分には、すでにねぐらにとまっていた。

12月14日(火曜日)

14時00分に谷口の方から煙樹ヶ浜のほうへ飛んで行ったが、15時00分にはねぐらへもどって来た。(ナベヅル3羽飛来確認)

12月15日(水曜日)晴れ

6時43分にねぐらで動きはじめた。

6時45分に羽をのばしたり羽作りなどをしたりしていたが、6時46分に北の方へ飛び立ち、6時48分に椎崎と高家の間の水田に降り、6時50分には用水路にはいり、採餌をはじめた。そして、6時55分には、一度外に出たが、すぐ用水路にはいって採餌をしながら東の方へ歩いていった。

7時03分に用水路から出て水田で、何かをついばんでいた。

7時05分に再び用水路にはいり、また採餌をしながら、東の方へ移動していった。

7時37分に飛び立ちその上空を6・7回旋回して西の方へ飛んで行った。

7時38分に谷口の東側約100メートルくらいの所のエンドウ畑に降りた。

7時48分には、東の方へ飛び立ち7時49分に椎崎の北側100メートルくらいの所へ降り、頭かきや羽づくろいをしていた。そして、7時54分に東の方へ飛び立ち、亀山と入山の間を南の方へと飛んで行き、姿を見失った。

8時40分に再び煙樹ヶ浜上空から姿を現わし、入山の方へと飛んできて東裏上空で4回くらい旋回した後、南東の方へ飛んで行き、8時55分に御坊市上空で姿を見失った。その後、日高平野を、くまなく探したが見つからなかった。しかし15時48分に煙樹ヶ浜の松林上空を飛んでいるのを見つけたが、3分後には、また姿を見失った。

16時30分に煙樹ヶ浜の方から北へ飛んでくるのを見つけた。途中で東に方向をかえて入山上空にくるとまた北の方へと飛んで行った。

16時33分には、ねぐら上空を何度も旋回したが、ねぐらには、とまらずまた北の方へと飛んで行った。そして、高家の山の山腹を何度も旋回した後16時44分に、高家の山の山腹の枯れ松にとまった。16時46分にこの木の上で羽づくろいをしていた。この後羽をひろげたり、はばたいたりしたが、飛ばなかった。

1951年12月15日の行動略図

12月16日(木曜日)くもりのち雨

朝のうちは、見つからなかった。

14時58分にねぐら上空へ飛んで来たが、なかなかとまらず何度も何度もねぐら上空を旋回した後15時03分にやっとねぐらにとまった。

12月17日(金曜日)晴れ

7時25分に入山上空を北の方へ飛んで行き、7時27分に椎崎と高家の間の水田へ降りた。

7時31分に用水路へはいり、採餌をはじめた。その後8時04分までこの用水路で採餌をしていた。

14時21分立花と小池との間付近にある、あし原で採餌をしているのを見つけた。

14時26分に飛び立ち旋回しながら南の方へ飛んで行き、14時40分に西裏と小池との間を流れる和田川におりてコサギといっしょに採餌をしていた。

15時04分に飛び立ち、15時05分にこの川の西側約100メートルくらいの用水路へおりて採餌をしていたが、15時56分に用水路から出てじっとしていた。

16時17分に飛び立ち、16時18分に立花と小池との間にあるあし原へ下り採餌をはじめた。

16時43分に飛び立ち16時49分にねぐらにとまった。

12月18日(土曜日)晴れ

7時06分に飛び立ち、7時07分に椎崎と高家の間の水田に降り羽づくろいをはじめた。

7時15分に用水路にはいり、採餌をはじめた。

7時20分に用水路から出て7時26分に南東の方へ飛んで行き、旋回しながら亀山と入山の間を南の方へ飛んでいった。

7時50分に入山と亀山との間の小川で採餌しているのを見つけた。

8時00分に飛び立ち、入山を越えて西の方へ飛んでいった。14時20分に椎崎と谷口の間の水田に降りているのを見つけた。14時34分に飛び立ち入山の山陰へ14時36分に姿を消した。そして、15時12分に西裏の西側を北に向かって飛んでいるのを見つけた。

15時15分から15時25分まで椎崎と小中の間の上空を旋回していたが、15時25分に高家の方へ飛んで行き、山の中腹を数回旋回した後東の方へ飛んで、15時28分に亀山上空を飛び南下し、また西の方へと飛んでねぐら上空を通って、15時35分に小池の北東100メートルくらいの水田に降りじっとしていた。そして、15時55分に飛び立ち旋回しながら谷口上空を飛び、16時01分に下志賀の王子神社の枯れた松の木にとまった。(ナベヅル3羽去る)

12月19日(日曜日)晴れ

7時10分に谷口の東50メートルくらいのエンドウ畑から飛び立ち、旋回しながら東の方へ飛んで行き、7時15分に小中の水田におりた。7時20分に用水路にはいり、採餌をはじめた。

7時50分に用水路から出て片足で立ち、くちばしを喉羽の中に入れじっとしていた。

8時08分に東の方へ飛び立ち何度も旋回して8時20分に亀山上空へ飛んで行き姿を見失った。8時24分にねぐら上空より現われ、8時25分に谷口のエンドウ畑におりた。8時35分に飛び立ったが一度旋回してまた同じ所へ降りた。9時10分に再び飛び立ち、南の方へ飛んで行って姿を見失った。15時19分にねぐら上空に現われ、旋回しながら高家の方へ飛んで行き、一度高家の山腹の枯れ松にとまったが、すぐ飛び立ち原谷の方へ飛んで行って、見えなくなった。15時57分にねぐら上空へ飛んできて、16時00分に、ねぐらの東50メートルくらいの所の枯れ松にとまった。

12月20日(月曜日)晴れ

6時57分ねぐらの東側50メートルくらいの所の枯れ松から飛び立ち、南の方へ飛び入山上空を南下し、西裏上空から東の方へ飛び、7時01分に亀山と入山の間の田へおり、7時03分に北の方へ歩いて行き7時04分に川へおりて採餌をはじめた。

7時44分に人が通りかかったので飛び立ち、北の方へ飛んで行き7時45分に椎崎の北東400メートルくらいの田へ降りて、じっとしていた。

10時29分に飛び立ち一度大きく旋回し、10時30分に飛び立った所より北200メートルくらいの田へ降り、羽づくろいをしてすぐ用水路にはいり、採餌をしながら北の方へ歩いて行った。

10時42分に車が通ったので飛び立ち2回大きく旋回した後、再び飛び立って近くの田へ降り、10時45分にまた用水路にはいって採餌をはじめた。時々、用水路から外にでたが、すぐまた用水路にはいった。

11時26分に飛び立ち一度旋回して南の方へ飛んで行き、11時28分に立花上空を旋回し西の方へ飛んで、11時29分に立花と小池の間の和田川へ降りた。

11時59分に降りた所より200メートルくらい上流から飛び立ち、12時01分に谷口の東50メートルくらいの水田に降りて、水田で何かついばんでいた。そして、用水路に沿って南へ30から50メートル歩いて行った。

13時55分に東の方へ旅立ち、13時56分に椎崎と高家の間の用水路に降り採餌をしていたが、14時13分に人が近づいたので、魚をくわえたまま飛び出し北の方へ飛んで行って県道の近くの水田に降りた。

14時16分に飛び立ち一度大きく旋回した後、南の方へ飛び、ねぐら上空を何度も旋回し、14時26分にねぐらの東50メートルくらいの所の枯れ松にとまり、羽づくろいをした。

16時30分には、とまった木の枝より一段下の枝に移っていた。

1951年12月20日の行動略図

12月21日(火曜日)晴れ

8時00分に椎崎と高家の間の用水路で採餌をしているのを見つけた。

8時23分に用水路から外に出て羽づくろいをして、その後くちばしを喉羽に入れ、じっとしていた。

8時44分には、あくびをするように、大きく口をあけた。口の中は赤かった。

9時10分に飛び立ち南の方へ飛んでいった。13時33分に西裏上空より2・3回旋回した後、西裏と西山の間の用水路に降り採餌をはじめた。

16時04分に飛び立ち北東の方へ飛んで行き、16時05分に立花と小池の間のアシ原へ降りて採餌をはじめた。

16時38分に飛び立ち、ねぐらへもどった。しかし16時45分に、ねぐらから再び飛び立ち何度もねぐらへとまろうとしたが、とまらず16時49分に北の方へ飛んで行き、高家の山の上空を西へ行ったり東へ行ったりした後17時03分に高家の山の中腹の枯れ松にとまり羽づくろいをした。

この木は、12月15日にとまった木と同じ木であった。

12月22日(水曜日)くもり

8月22分に西裏と西山との間を流れる和田川から飛び立ち、北の方へ飛んで行った。

8時33分に谷口の東50メートルくらいのエンドウ畑に降り、北の方へと歩いていった。

8時38分に飛び立ち、何度も旋回しながら東の方へ飛んで行った。

8時40分に椎崎と高家との間の水田におり8時46分には再び飛び立ち、南の方へと飛んで行った。

10時42分に亀山と入山の間の上空を西に向かって飛んでいるのを見つけた。

その後入山を越え10時50分に西裏の西側を流れる和田川へ降り、昼からは、見つけることができなかった。そして、ねぐらに戻ってこなかった。

12月23日(木曜日)晴れ

6時30分から9時10分までと、14時30分から17時00分までの2回入山付近を探したが見つからなかった。

しかし、付近の人の話によると朝、小中付近を飛んでいたらしい。それに14時00分ごろにも西山と入山の間の水田にいたそうだが、確認することができなかった。その後、コウノトリは確認できなかった。

まとめ

  • コウノトリの飛行は、滑翔と帆翔とであり、昼ごろには、よくグライダーのように開長2メートルの翼を広げ、はばたくことなく滑翔するこの姿は、雄大そのものであった。

 また、天気のよい日などは、上昇気流にのって大きく旋回しながら長く帆翔することもあった。普通コウノトリは首を伸ばして飛ぶのであるが、11月28日には、さらに1羽が加わり2羽になったが、このコウノトリは首を縮めてサギのように飛ぶこともあった。

  • 採餌は、くちばしを水中につっこみ、少し口をあけ、底の泥をすくうようにして餌を捜し、魚を捕えた時は一呼吸して一気にのみこむというような採餌のしかたであり、採餌中はとても警戒していて、ちょっとしたことでも首を真っすぐに立て、非常に回りを気にしていた。コウノトリの行動は、餌の量と採餌をする場所にもっとも関係があって、最初のころは、餌となる小魚なども豊富であったことから行動半径も狭く、魚の取りやすい小さな溝や用水路を、主に採餌場所としていたが、日がたつにつれ行動半径も広くなり、採餌場所も用水路などから川へと移っていた。
  • ねぐらでは、首をS字形に縮め体をふくらませ、くちばしを喉羽の中へ入れ片足で立って休むのが常であった。そして、ねぐらを飛び立つのは、日の出前の午前6時から7時までであり、一定しているが、ねぐらに入るのは午後の2時から6時までというように、かなりのばらつきがあった。これは天候にも左右されていた。風の強い日は下の枝にとまって風を避けていた。ねぐらでの特に目立った行動としては、2羽目が飛来した11月28日に木の枝でくちばしふきをしたことや、マツボックリや木の枝をくわえたりしていたことであった。
  • 排出は飛行中シャワーのように液状のものを、広く噴射し、水田やねぐら付近には白色又は、一部クリーム色の糞が散らばっている。
  • 足の大きさと歩幅は、次のとおりであった。
足跡の観察結果画像

他の鳥との関係をみると、採餌はよくコサギといっしょにしていて、飛行中はカラス・トビなどと一緒に飛んでいた。そして、ねぐらでは、ゴイサギ・カラスなどとよく一緒にとまっていた。コウノトリの飛行中に飛来したナベヅルとは、あまり一緒にいなかったが、時々ナベヅルの近くへ降り、採餌をすることもあった。こういうことが、このコウノトリの観察で、わかったことであった。とにかく、この鳥は、滅びゆく孤独な鳥であるが、それを微塵も感じさせない優雅な鳥である。

(黒田隆司・津野修一・龍神幸明 1977あかね9号)(写真 久保善彦・森本浩司)

コウノトリがゆく

冬の空をゆく

音もせず

声もなく

つばさの隙に陽がこぼれ

にじみゆく足の紅

空碧く

いよいよ碧く

大いなる影

今うつりゆく

広野稚昭(元日高高校教諭)

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